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2014年1月21日 (火)

『キルギスの帽子』       ― 草野早苗 詩集 ー

日頃俳句には親しんでいるものの私の「詩」に対する垣根は高く
詩を書くことへの憧れみたいなものはずーっとあっても書いたことは無い。

草野早苗さんの詩集『キルギスの帽子』はそんな私を
ぐっと詩に近づけてくれた。
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後ろ向きのウサギが私の脳裏に現れ、ぴょんぴょん跳んで行って振り向いては消え、又現れては私へ振り向く。着いておいでと言わんばかりに。
もしかしたらあのピーターかも知れない。
そんなとき私はこの詩集をひらく。

紹介したい。 

『キリギスの帽子』    ― ウサギを煮る ―

スーパーマーケットの一番奥で
ウサギの肉が手に入る
それがとびきりおいしかったと
ヤンという友達に話したら
翌週ウサギを一羽持って来た

キッチンスツールに腰掛けて
本を読んでいる間に
さばいてくれることに交渉は成立し
私はゲーリー・スナイダーの
詩集を読みつつ
時おりウサギの惨事を片目で見た
ナタとキッチンバサミで
ウサギの手が飛ぶ足が飛ぶ

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「ピーターのお父さんを食べたのは
隣の家の何という人?」
振り向いた男の顔はちょっと凄みがあったので
このままでは愛し合ってしまうかと思い
急いで本に顔を戻す

ウサギはピンクの肉塊となって
ヤンは
「とまと煮にしてもおいしいし
クリーム煮にしてインゲンを入れてもいいよ」
と言った
お茶でも出そうと思ったが
ヤンは石鹸で爪の中まで洗うと
ビニール袋にウサギの顔や尻尾を入れて
「さようなら」と帰っていった

半分は冷凍にして
半分は塩ゆでにした
スープ鍋にヤンの青い瞳が映っている

ピーターのお父さんを食べたのは誰?
それはひとりぼっちの誰?

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

草野さんは仕事の合い間に世界を旅し、旅の合い間に仕事をする
所謂「今」を生きる女性の前衛的生活スタイルの人に思える。

風の吹くままという様な次元とは全く違う。
彼女そのものが風であり詩人であり、れっきとしたビジネスウーマン。
少し謎めいているところも魅力。

「ウサギを煮る」は私を虜にした詩。

・・・・振り向いた男の顔はちょっと凄みがあったので
    このままでは愛し合ってしまうかと思い・・・・

この二行だけでも充分インパクトがあって、この部分のみを
抜粋する積りが結局最初から最後の「?」まで行ってしまった。

凄みがあって「愛し合ってしまかもしれない顔」ってどんな顔なのだろう。
草野さんの詩人の眼は読者をぞくっと困惑させ虜にてしまう。

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キルギスの帽子。
この帽子の中から次々に
詩が湧いて来たのですね。




詩集の中の栞に詩人八木幹夫さんの文章が載っている。
『キルギスの帽子』によせて
「流浪する帽子 八木幹夫」 これを読めるのも凄い。

 

表紙の装画は茸地寒さんの作。
私も寒さんの絵を一枚秘蔵している。
この絵については次回ご紹介したい。

 *画像はクリックすると大きくなります。

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コメント

kanさん
あ~、あのアンモナイトのような神秘的な絵ですね。巻貝の・・・
(こんな表現しか出来なくてすみません)
詩集は確かkanさんのブログにご紹介されましたね。
今、桜ヶ丘句会のお仲間なのですね。驚きました。
草野さんの『キルギスの帽子』のご縁ですね。
(hoko)

投稿: hoko | 2014年1月23日 (木) 21時18分

いほこさん ありがとうございます。
次作で詩集「ジャム煮えよ」坂多瑩子著は
ご存知でしょうか。坂多さんは草野さんを通じての依頼があり表紙絵を描きました。坂多さんは桜ヶ丘句会だけに参加されています。

投稿: kan | 2014年1月23日 (木) 18時31分

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