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2012年5月26日 (土)

興梠 隆句集      『背番号』より

 陽はだるく風はきびしき卯波かな       興梠  隆

人として生まれていつの頃から春夏秋冬を知ったのだろう。
私は春になってスカートを履きたくて駄々を捏ねたのは5、6歳の頃。季節を肌で感じた最初の頃の記憶である。

少し大きくなって10歳頃だったか。
ああ、風の日が続いている。磨り硝子戸がカタカタ風に鳴って
やけに明るい日差し。春とも違う。
子供にも分かった季節への既視感。
「確かこんな日は以前にもあったっけ」

今になって、あれは卯波の頃だったと思う。


そして開きたくなる句集『背番号』。(2011年上梓)

 
 つばくろや上手に曲がる路線バス

 
 春愁やプラネタリウム百夜過ぎ
 

 春風や仮設便所を積んで去る

 ぶらんこの子の顔が飛ぶ日暮かな

 折詰のバランのみどり昭和の日

 モネの絵に樹の影のある五月かな

 ディートリヒの目尻辿れば鉄線花

 六月の碍子(がいし)一個の光なり

 ガススタンドに女神のマーク夏の月
 

 
背番号浸して秋の水重し

 焚火してとんちんかんな涙出て

 冬青空毎日遠くへ行く仕事
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俳句に少し距離を置きたくなったとき、
自分自身にマンネリを感じたとき、
この句集を開けばきっと叉俳句が好きになる。

視点をほんの少しずらせば、こんなに新鮮な句が溢れ出てくる。

『背番号』はそんな句集である。

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