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2010年1月28日 (木)

句集 『アングル』

小久保佳世子さんの句集『アングル』は過去に読んだ他の句集とどこかが違う。
故に少し鑑賞めいたことを書きたくなった。

作者は俳句を作るということに対してまったく気負いがない。
このあたり俳句に向かう作者の姿勢に、余裕みたいなものさえ感じてしまう。

Img_6190_4 それは、日頃から作者が言っている「誉められたくて俳句を作るのではない」という自然体に合致する。

作者は我々がうすうす思っていても中々表現出来ないことをずばりと表現してしまう。
俳句よりも詩により近いのかなぁ。でもいくつかの句を除きほとんどが定型。ごつごつしている訳でもない。やはり表現方法が新しいのだ。

  手遅れのやうなる街や春マスク      
決して派手な言葉は使わない。「春マスク」の下の呟きともとれる「手遅れのやうなる街」。

  点滅の蛍や地球の持ち時間
「地球の持ち時間」とはアクション映画でもテレビドラマでもなく、真実の地球の姿。
故に怖い。「点滅の蛍」が不安を煽る。心憎い季語の設定。  Img_6197_5


   白シャツからアフリカの腕伸びてをり
   春眠とも違ひベンチに垂れてをり
   一万歩来てぼろぼろのチューリップ
   地下溽暑沈殿物となりて人
   黒蟻の集つてきて鬱の字に
   水族館暗し冬眠したくなる
   くすぐつたくなつてそろそろ桜の芽
   月揺れて川揺れて人踊るなり

怖いような呟きは句集の始めから終りまで小波のように寄せては返す。
でも決して暗くはない。何故なら句集の表紙は鮮やかなブルーの中に考える人と猫。
表紙の澄んだブルーが脳裡に煌き続ける中を、
「街」今井主宰の言われる「絶望」から「再生の志」へと必ず辿り着くのである。

佳世子さんの「再生の志」の果なるものは何なのか。
それは誰にも分らない。佳世子さんにさえも。
今後発表される句がますます楽しみ。

素晴らしい句集『アングル』は上梓されたばかり。佳世子さん、おめでとうございます。

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